西部劇にはある一定の憧れがある。浮かぶ言葉とすれば、ハードボイルドと自由と荒廃というところだろうか。それに加えるならば、木造家屋。登場人物は飲み屋のマスター、ガンマン、無法者、娼婦に保安官、棺桶職人くらいしか思いつかない。あの簡素であっという間に潰れて、またあっという間に復旧されそうな木造建築物を作っているはずの大工をスクリーン内に観た記憶がない。西部では皆自分自身で家を作るんだろうか。あるいは同じ木製なので棺桶職人が兼ねているのだろうか。あの統一感のある建築物群を見るにつけ、かなりしっかりした大工集団がバックにいるように思えてならないのだが。
こんなふうに西部劇に言及するのは、我が家の自家製の柵を見る度、何か西部劇っぽいなと感じてしまうからだ。やや黄色がかった、不揃いに打ち付けられた柵は、ぱっと見は何とも不細工にも思えるが、長く付き合っているととても愛着が湧いてくるのだ。元々一時的に取り付けた柵のはずが、2年近くもそのままにしていると、今更取り外すのも忍びない。まあ、塗装もいい加減だし、いささか劣化はしてきているし、強度が弱いところもある。潮時と言えばその通りだ。

下の子が歩き出すことを考えて、パートナーがそろそろ本気で柵を見直したい気持ちになってきていたので、これを機についに柵の更新に取り組むことになった。ハードウッドを使った綺麗な柵の設置をずっとコンセプトとして考えてはいたのだが、綺麗な柵ほど少しの乱れがあると我慢できなくなるし、かなり重くなるのでちゃんとした強度設計も大切だ。そのため、ハードウッド柵作製がずるずるずるずると延びていた。
そこで、まあ、ハードウッド系はちょっと脇へ置いておいて、プランターを並べて柵代わりにするという、パートナー案を採用することにした。が、安っぽいプラスチックプランターを家の表側に並べるのは、我々は好きではない。プラスチックは昭和を象徴する文明だと思う。古き良きとは感触が少し違う。そんなわけで、木製プランターをインターネットで購入し、並べることとした。木製プランターってやつはこれまた結構値段がいろいろあって、上を見ると大変。なら、下を見て自作するかとも考えるのだが、木材の質や防腐処理を考えるととても安くはできないし、何より面倒だ。結局、そこそこ安くかつ品質も高そうなやつをどうにかこうにか見つけて購入に至った。パートナーが選びに選んだ花を植え、何とか柵代替の第一弾は完成している。
それにしても、女となると花が好き。男となると柵が好き。一概にそうだとは言い切れないけど、傾向性はそれなりに高い気がする。一体この感性の差はどこから来るのだろうか。染色体のせいなのか。仮にもし、西部の荒野が花だらけだったら、西部劇の建築物はもっと違った姿になっていたかもしれない。お花畑で決闘というわけにもいくまいし。まあ、どうでもいいけれど。

とはいえ、新しい柵も設置する。さくっと……。まずは既製品からだ。これまた木製なのだが、ホワイトアッシュの色にした。方向性はどちらかというと洋風だ。家と木製プランターが和風の傾向を示している状態で、イングリッシュガーデン(を目指す庭)とホワイトアッシュの柵がどう融合していくのか、またさせるべきなのか。それを考えながら、はたまた大して何も考えられず、とにかく設置してみる。擁壁上への設置も検討したが、擁壁の幅が今一つ狭い。とりあえずは簡便な(しかし値段はそこそこ張る)杭打ち方式でトライすることになった。

杭打ちと言っても、結構杭がでかい。直径で最大10cmくらいあって、それを結構固い地面に打ち付けるわけだから、手持ちのハンマーくらいではとても太刀打ちできない。だが、幸い兄より借用している業務用穴掘り器があって、それでもってとりあえず杭を埋めることにした。とにかく杭を埋めなきゃ始まんない。
穴を空けて杭を挿し、さらに周りを石を混ぜながら埋める。杭が大きい分これだけでも心配なほどグラグラするわけでもないが、風に負けて傾いてくるなどの支障が出てきたら、1個ずつ杭の周りを掘り直し、セメントを流し込もうと思っている。

なお、この柵にはさらに耐久性をもたせるため亜麻仁油を塗ったのだが、殊の外量が必要で、手持ちの分では結局2枚のフェンス板のうち1枚しか塗れなかった。それで少し色合いが異なる。逆に、亜麻仁油を塗った方はホワイトアッシュの塗料が少し弱くなって目地がはっきりしてきているような気がする。別に塗料が溶けたわけでもなく、ホワイトアッシュの表面の散乱光が少なくなり白っぽさが抜けたせいか、亜麻仁油が酸化してやや黄色みがかったせいなのかと思っている。たまたま1枚しか塗っていない羽目になってしまったので、折角だから今後耐久性の差を実験的に観察していくつもりだ。

new_fence_1
第一次柵構築計画実施後
落下防止用暫定柵1
従来西部劇的暫定柵