一昔前からある観光ホテルや旅館に限ったことかもしれないが、部屋の窓側に椅子に座って寛ぐ空間がある。その空間の名前はよく知らない。思うに、和風の部屋から外の景色を眺めるには窓が凄く低くないといけない。壁が全面窓とか、そういうものを作れなかった時代、部屋からの景色を楽しむには椅子に座る洋風の空間が必要だったのだと考えている。
しかし、自分を思い起こすとその空間を楽しめた記憶がない。若い連中だとドタバタだし、子供がいるとバタバタだし、夜中にゆっくりと思っても既に酔っ払ってグデングデンで。優雅に椅子に座って風景を眺める。ビールをちびちびかウイスキーを嗜む。そんなのはもっともっと先の話か。

和室の濡れ縁(縁台)もそれに似通っていると思う。むしろ、ホテルや旅館のあれが濡れ縁をモチーフにしたような感じか。和室を拵える際に、外を眺められるようにと濡れ縁を作った。家の前の道路に向かっているので、庭木を愛でるというようなことはできないが、朝日や月や眼前に広がる畑をぼーっと眺めることはできて、なかなかのもの。但し、しょっちゅう稼働しているわけではない。気候の良い時季に出ているくらいであとは暑かったり寒かったり。冷暖房機器の整う室内へどうしても入ってしまう。

そんなわけで作った当初からメダカやエビなどが入ったメダカ鉢やらミニ火鉢が置かれているのみだったのだが、一時期ネコが棲みついたせいもあるのか、雨風日光によるものか、3年目にして色落ちが目立ってきた。そこで再塗装に踏み切った。
元々茶色のステインが塗られているので色が剥げたところを中心に重ね塗りするつもりで挑んだ。
屋外用の水性ステインは以前から調査はしていたのだが、木製プランターのメンテナンス用に一緒に購入したものを使うことにした。というか、いろいらなものを塗る兼用目的で買っていた。木製プランターの購入先であるWOODPROでは和信化学工業のガードラックアクアを独自調色したものを販売している。これのダークブラウンは濡れ縁の色とちょうど合うし、白木に塗ってもいい色に塗れるのだ。

塗料を指示通りに2倍に薄め、直径4センチ程度のミニミニローラーで塗っていった。ミニミニにした理由は、格子状の棒で構成された濡れ縁の隙間も塗れるようにしたかったからだ。しかし、直径4センチでも太く、隙間を塗るのは結局断念した。既に塗装された木にはなかなか染み込みにくい。そのため、ローラーで塗っても斑状に塗料が残ってしまう。
そこで、ローラーと刷毛を併用するのがいい。ローラーで各場所に塗料を置いていき、刷毛で軽く伸ばすイメージだ。刷毛だけだと、全部塗るのは手間だし、最初は刷毛が塗料を多く含むのでどうしても下に垂れる危険性か高まる。ステイン系はしゃばしゃばしてるので特に。
ちなみに養生は外壁と接するところだけを養生テープで簡単に。実は下にもごみ袋で養生しようと思ったのだが、割りと障害物が多くて面倒くさく、さっさと止めてしまった。結果、数滴は下のコンクリートにシミを作ったが、まあそのうち取れるだろう。

完成後は前よりも随分と表面がさらさらとしていい感じになった。色も定着すると深みが出て、元の色と塗った色の差がほとんど視認できない。強いて言えば格子の隙間だが、まあここは最初からムラがあったし……。正直、毎年塗り直しとか、そういうことをすこぶる面倒くさいと思う質だ。だから3年とか5年に1回、気分転換に塗り直しというペースでエイジングされれば御の字だなと願いつつ、時折低い赤い月を眺めたりするのだ。

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ミニミニローラーのおかげで割と手早くできた
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拡大。やや塗りムラはあるが……